「夫の不倫」の責任は妻にもあるのか?

query_builder 2024/01/10

一般的に、不倫は民法上の「不法行為」とされ、もし夫が妻以外の女性と肉体関係をもてば、妻はその相手女性に対して慰謝料を請求できます。

そんなとき、慰謝料を請求された相手女性は「不倫された妻にも責任がある」と反論できるのでしょうか。

慰謝料を減らすため、妻の「落ち度」を主張することは認められるのでしょうか。

男女関係をめぐる法律問題にくわしい弁護士濵門俊也が回答します。


●妻が「法的責任」を負うことはないが・・・

慰謝料を請求された不倫相手の女性が『不倫された妻にも責任がある』と反論できるかどうかと言えば、『できる場合もある』ということになります。

誤解のないように述べておきますが、あくまでも不貞行為に及んだ人(本件でいえば夫)が責任を負うものであり、その配偶者(本件でいえば妻)が法的責任を負うものではありません。

『できる場合もある』と述べたのは、相手女性が『すでに婚姻関係が破綻している』と主張できる場合があるという話です。

この主張は、不貞行為の相手方に損害賠償を請求する事件において、ほとんどの事案で相手方から主張される抗弁です。

もっとも、この抗弁が裁判で認められるようになったのは意外に新しく、1996年の最高裁判決(最三小判平成8年3月26日)がその嚆矢となっています。


●「婚姻関係が破綻していたか」は客観的な事情で判断

相手女性からの「婚姻関係が破綻していた」という主張が常に認められるかといえば、必ずしもそうではありません。

裁判所による『すでに婚姻関係が破綻していた』という認定は、夫婦間の関係を全体として客観的に評価することとされています。

すなわち、当事者の主観のみで判断されるものではない、という点に注意が必要です。

相手女性としては、慰謝料の金額を減らすか責任を免れるために、妻の『落ち度』を主張することがあり得るでしょう。

具体的には、夫婦間の慈しみが失われ、会話や食事等の日常的接触を避けるようになってからある程度の期間が経過し、さらに寝室や家計までも別々であった、などといった主張することが考えられます。

しかし、相手女性が主観的に『婚姻関係が破綻していた』と考えていたとしても、その主張がそのまま裁判所に認められるわけではありません。

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