「遺産」と聞いて、何を思い浮かべますか?
預金通帳、不動産の権利証、あるいは貴金属。これまでは、そうした「目に見えるもの」が相続の主役でした。
しかし、2026年現在の私たちは、生活の大部分をスマートフォンという「黒い鏡」の中に閉じ込めています。
もし今日、あなたに万が一のことがあったら、遺された家族はその鏡の中にある資産にたどり着けるでしょうか。
今回は、現代社会において避けては通れない「デジタル相続」の法的リスクと、今すぐ取り組むべき対策について解説します。
1. 「お金」のデジタル遺産:暗号資産とネット銀行の盲点
デジタル遺産の中で、最もトラブルになりやすく、かつ税務上のリスクが高いのが「金融資産」です。
暗号資産(仮想通貨)の凍結リスク 2026年1月より、暗号資産の国際的な報告枠組み(CARF)が本格運用され、税務当局は個人の取引をより詳細に把握するようになりました。
しかし、家族がその存在を知らなければ、相続手続は進みません。
秘密鍵・パスワードの紛失: 家族がスマホのロックを解除できず、取引所のパスワードも不明な場合、資産は「永久に凍結」されます。
相続税の落とし穴: 換金できない(取り出せない)にもかかわらず、税務当局から資産として認定され、相続税だけが課税されるという最悪のシナリオも現実に起こり得ます。
ネット専用銀行・証券 紙の通帳が発行されないネット銀行は、遺族が口座の存在自体に気づかないケースが多発しています。
2. 「負」のデジタル遺産:サブスクリプションの罠
「負の遺産」は借金だけではありません。
現代では、「止まらない課金」が遺族を苦しめます。
自動更新の連鎖: 動画配信や音楽アプリだけでなく、最近では「生成AIアシスタント」や「健康管理アプリ」の高額な年間サブスクリプションが増えています。
解約の壁: 本人のデバイスがロックされていると、解約手続が困難になります。
クレジットカードを止めても、決済プラットフォーム(AppleやGoogle)経由の契約は、手続を完了するまで請求が続くケースがあるため注意が必要です。
3. 「心」の遺産:SNSと写真データの保護
SNSは個人のプライバシーの塊であると同時に、家族にとってはかけがえのない思い出です。
追悼アカウントの活用: 主要なSNSには、死後にアカウントを保護し「追悼」状態にする機能があります。
レガシー機能の設定: Appleの「故人アカウント管理連絡先」などの機能を事前に設定しておけば、特定の家族にのみ写真データ等の継承を許可することが可能です。
4. 2026年の新常識:電子公正証書遺言の活用
デジタル資産の増加を受け、法制度も進化しています。
2025年末から本格化した「電子公正証書遺言」により、ウェブ会議を通じて遺言を作成することが容易になりました。
デジタル資産は、サービスの種類やID・パスワードが頻繁に変わるため、従来の紙の遺言書だけでは対応しきれない側面があります。
最新の法制度を活用し、デジタル資産の目録(リスト)を適切に管理・付記しておくことが、これからの時代のスタンダードです。
今日からできる3つの対策
デジタル資産の「棚卸し」: 利用しているネット銀行、証券、暗号資産、サブスクを一覧にする。
スマホの緊急時設定: 各OSが提供している「故人アカウント」設定を今すぐ行う。
アナログな「鍵」の保管: 最終的なマスターパスワードや、資産リストの所在だけは、信頼できる家族や弁護士に紙や公正証書で伝えておく。
おわりに:迷ったら専門家へご相談を
デジタル遺産の問題は、ITの知識だけでなく、相続法、プライバシー権、そして最新の税務判断が複雑に絡み合います。
「自分のスマホの中身、家族はどうするんだろう?」と少しでも不安を感じたら、ぜひ一度当事務所へご相談ください。
2026年の複雑な法的環境において、あなたの、そしてご家族の権利と想いを守るための最適な「準備」を共に進めていきましょう。
弁護士 濵門俊也
住所:東京都中央区日本橋人形町1丁目6−2 安井ビル 5f
電話番号:03-3808-0771
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