▼公正証書遺言があるが、遺言執行者が選任されていない。どうなるのでしょうか。

query_builder 2026/04/16
相続 人形町 コラム
▼公正証書遺言があるが、遺言執行者が選任されていない。どうなるのでしょうか。

公正証書遺言において遺言執行者が指定されていない、あるいは指定された者が就職を拒絶・死亡したなどの理由で不在である場合、その遺言が無効になることはありません。

遺言の効力は発生しており、その執行については以下のいずれかの方法で進めることになります。


相続人による共同執行

遺言執行者がいない場合、原則として相続人全員が共同して遺言内容を具体化する義務を負います。

例えば、不動産の所有権移転登記、預貯金の解約・払戻し、有価証券の名義書換などの手続を、相続人全員の署名や実印(印鑑証明書)を用いて進めることになります。

ただし、特定の相続人に「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)がある場合、受任した相続人が単独で登記申請を行うことが可能であるなど、実務上の負担が軽減される場面もあります。

一方で、相続人間で感情的な対立がある場合や、相続人の人数が多い場合には、全員の協力を得ることが困難になり、手続が停滞するリスクが生じます。

家庭裁判所への遺言執行者選任申立て

実務上、最も一般的な解決策は、家庭裁判所に対して遺言執行者の選任を申し立てることです(民法1010条)。

利害関係人(相続人、受遺者、遺言者の債権者など)が、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。

裁判所は、遺言の内容や資産状況、相続人間の関係などを考慮し、適任と判断される者(弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることが多いです)を遺言執行者として選任します。

選任された遺言執行者は、相続人の代理人とみなされ、単独で遺言の執行に必要な一切の行為を行う権限を有することになります(民法1012条1項)。

遺言執行者が必須となるケース 多くの場合、執行者がいなくても手続自体は可能ですが、以下の事項が遺言に含まれている場合は、法律上必ず遺言執行者が存在しなければなりません。

子の認知(民法781条2項)

推定相続人の廃除またはその取消し(民法893条、894条2項)

これらの事項は、戸籍に関わる手続や家庭裁判所への申立てを伴うため、相続人が自ら行うことはできず、遺言執行者がいない場合は必ず裁判所に選任を申し立てる必要があります。


特定財産承継遺言と登記実務

近年の民法改正および不動産登記法の運用により、特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言については、遺言執行者がいなくとも、当該相続人が単独で登記申請を行うことができます。

しかし、遺言執行者が選任されている場合には、遺言執行者もその対抗要件具備(登記申請)を行う権限を有します(民法1014条2項)。

もし遺言の中に「遺贈(相続人以外への譲渡)」が含まれている場合は、共同相続人全員の協力が必要となるため、円滑な執行のために専門職の執行者を選任するメリットが大きくなります。


結論としての流れ

現状、執行者がいないことによって直ちに手続が止まるわけではありません。

まずは遺言の内容を精査し、相続人全員の協力が得られる状況であれば共同で執行を進め、もし非協力的な相続人がいる場合や、手続が煩雑で専門的な知見を要する場合には、速やかに家庭裁判所へ選任申立てを行うのが実務的な判断となります。

公正証書遺言であれば、遺言の有効性自体が争われるリスクは比較的低いですが、執行権限の有無は金融機関や法務局での手続スピードに直結します。


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弁護士 濵門俊也

住所:東京都中央区日本橋人形町1丁目6−2 安井ビル 5f

電話番号:03-3808-0771

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