▼「AIが書いた契約書」を法務がそのまま使ってはいけない5つの理由と、正しい“AI共存型”リーガルチェック

query_builder 2026/10/14
人形町 コラム
▼「AIが書いた契約書」を法務がそのまま使ってはいけない5つの理由と、正しい“AI共存型”リーガルチェック

近年、ChatGPTをはじめとする生成AIの利便性が飛躍的に向上し、法務実務や契約書作成においても日常的に活用されるようになってきました。「AIに提示された文面を使えば、一から条項を起こす手間が省けて業務効率が劇的に上がる」と感じている事業者や法務担当者の方も多いのではないでしょうか。

しかし、「AIが生成した契約書や条文を、リーガルチェックなしでそのまま実務に使うこと」には、経営上の深刻なリスクが潜んでいます。

本記事では、弁護士の視点から「なぜAI作成の契約書をそのまま使ってはいけないのか」という5つの理由と、AIの強みを活かしつつリスクを回避する“AI共存型”の正しいリーガルチェック手法について解説します。

なぜ「AI作成の契約書」をそのまま使ってはいけないのか?(5つの理由)

1. 自社特有の「ビジネスモデル・取引リスク」を把握できない

生成AIは、インターネット上の一般的な膨大なデータを学習して回答を生成します。そのため、提示される条文はあくまで「一般的な雛形」にとどまります。

実際のビジネスでは、業界独自の慣行、取引先との力関係、自社が許容できるリスクのラインなど「自社固有の個別事情」が存在します。AIはそれらの文脈を完全に理解することはできないため、自社を守るために真に必要な特約やリスク回避条項が抜け落ちてしまう危険があります。

2. 最新の法改正や裁判例・行政ガイドラインへの追従限界

法改正や新しい裁判例、省庁が発出するガイドラインは日々更新されています。AIの学習データには更新ラグが存在する場合があり、旧法前提の条文や、最新の規制・ガイドラインに抵触する表現が出力されるリスクがあります。

特に、下請法・フリーランス新法や個人情報保護法など、毎年のように運用が変わる分野では、専門家による最新知識の裏付けが不可欠です。

3. ハルシネーション(嘘の知識)や「法的に無効・不適切な条項」の混入

AIが実在しない法律や解釈をあたかも正当であるかのように出力する「ハルシネーション」は、法務分野でも発生します。

一見すると論理的で完璧に見える契約条項であっても、公序良俗違反(民法90条)や消費者契約法・下請法などに抵触して「法的に無効」となる条項が混ざっているケースがあり、そのまま締結するとトラブルの原因になります。

4. 契約全体の「不整合」や「用語の揺れ」が生じやすい

契約書は、特定の条項単体ではなく「全体としての整合性」が極めて重要です。

例えば、「損害賠償の範囲」と「契約解除の要件」、「危険負担の移転時期」など、相互に関連する条項の整合性が取れていないと、万が一の裁判の際に契約解釈をめぐって致命的な不利益を被るおそれがあります。AIに部分的な修正や条文作成を繰り返し指示すると、用語の表記揺れや参照条数のズレが発生しやすくなります。

5. 情報漏洩リスク(プロンプト・入力データ管理)

AIツールに顧客情報、未公開のプロジェクト内容、機密技術情報などをそのままプロンプト(指示文)として入力すると、AIの学習データとして利用され、外部に情報漏洩するリスクがあります。

企業で利用する際は、オプトアウト設定(学習に利用させない設定)やエンタープライズ版の活用など、セキュリティ面のガバナンスが前提となります。

弁護士が提案する“AI共存型”リーガルチェックの設計図

AIを完全に排除するのではなく、「AIの得意分野」と「人間の専門家の役割」を明確に分担することが、業務効率化とリスク管理を両立させるカギです。

プロセス役割分担具体的な業務内容
ステップ1:下書き・骨子作成AIの活用取引の概要を入力し、必要な条項の漏れがないかベースとなるドラフトを作成させる
ステップ2:ビジネス適合性検証自社法務・現場自社が負うリスク(納期・責任範囲・対価)が現実的な実務と合致しているか確認する
ステップ3:リーガルチェック・修正弁護士(専門家)最新法規制への適合、ハルシネーションの排除、有利・不利のバランス調整を行う

AIを“有能な助手”として使いこなすコツ

  • 「ブレインストーミング」として使う:

    「〇〇の取引において想定されるリスクと、それを防止するための一般的な条項案を挙げて」といった形で、漏れを防ぐためのチェックリストとしてAIを活用するのが効果的です。

  • プロンプトでの「条件設定」を厳密にする:

    「当社(受注者)側に有利な条件で」「〇〇法に配慮した形で」など、立場や前提条件をクリアに指示することで、制度の高いベースが得られます。

まとめ:AIは「ドラフト作成」、最終判断は「人間の専門家」へ

生成AIは、契約書作成のスピードを格段に上げてくれる素晴らしいツールです。しかし、契約締結によって生じる「最終的な法的責任」を負うのはAIではなく、企業自身です。

  • AI作成のドラフトでスピード感を確保する

  • 自社固有のリスク管理と最新法務への対応は弁護士に依頼する

この「AI×弁護士」のハイブリッド構造こそが、AI時代の最もスマートで安全な契約実務の形と言えます。

自社で作成されたAIドラフトの契約書チェックや、自社に合わせた契約書テンプレートの構築をご希望の際は、ぜひお気軽にご相談ください。


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弁護士 濵門俊也

住所:東京都中央区日本橋人形町1丁目6−2 安井ビル 5f

電話番号:03-3808-0771

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