▼遺言書を作成する際のポイント

query_builder 2025/10/21
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遺言書の作成にあたっては、単に「意思を残す」だけでなく、法的に有効で、死後に確実に実現されるようにするための配慮が不可欠です。

以下、できるだけ詳細かつ体系的に解説します。


1. 遺言書の種類とそれぞれの特徴
日本の民法では、主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類が認められています。
• 自筆証書遺言は、遺言者が全文を自筆で書く方式です。費用がかからず手軽ですが、形式不備による無効リスクが高いです。

2019年の法改正により、財産目録部分はパソコン作成や通帳コピー添付が可能になりましたが、それ以外の本文は手書きが必須です。
• 公正証書遺言は、公証人が遺言者の口述をもとに作成し、公証役場で保管される方式です。

証人2名の立会いが必要ですが、法的に最も安全で、家庭裁判所の検認も不要です。認知症などの疑いがある場合でも、公証人が意思能力を確認するため、後の争いを防ぎやすいです。
• 秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、公証人に遺言の存在だけを証明してもらう方式です。

内容は自筆でなくても構いませんが、形式不備のリスクがあり、検認も必要です。現在ではあまり使われていません。


2. 法的要件の遵守:形式不備による無効を防ぐ
遺言書は、民法で定められた方式に従っていないと無効になります。

特に自筆証書遺言では、以下の点が重要です。
• 全文を自筆で書くこと(財産目録を除く)
• 日付を明確に記載すること(「令和7年10月21日」など)
• 署名と押印をすること(認印でも可だが、実印が望ましい)
• 訂正は民法の定める方法で行うこと(訂正箇所に二重線を引き、訂正した旨を付記し、署名・押印)
これらを怠ると、せっかくの遺言が無効になる可能性があります。


3. 遺言能力(意思能力)の確認
遺言は、遺言者が「遺言能力」を有していることが前提です。

つまり、遺言内容を理解し、自分の意思で判断できる精神状態である必要があります。
• 認知症などで判断能力が低下している場合、遺言が無効とされる可能性があります。
• 公正証書遺言では、公証人が意思能力を確認するため、後の争いを防ぎやすいです。
• 医師の診断書や録音・映像記録を残しておくことで、意思能力の証明に役立つ場合があります。


4. 保管方法と発見性の確保
遺言書は、死後に発見されなければ意味がありません。保管方法にも注意が必要です。
• 自宅保管は紛失や改ざんのリスクがあります。
• 2020年から始まった「法務局による自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば、安全に保管でき、死後に相続人へ通知されます。
• 公正証書遺言は公証役場に保管されるため、紛失の心配がありません。


5. 内容の明確性と実現可能性
遺言の内容は、具体的かつ実現可能である必要があります。
• 「長男に家を相続させる」といった表現ではなく、「東京都中央区〇〇の土地建物(登記簿番号〇〇)を長男〇〇に相続させる」と明記することで、誤解や争いを防げます。
• 相続人以外への遺贈(例えば友人や団体)を行う場合は、氏名や団体名、住所などを正確に記載する必要があります。
• 遺留分(法定相続人に保障された最低限の取り分)にも配慮しないと、遺言が争われる可能性があります。


6. 専門家の活用と定期的な見直し
遺言は一度書いて終わりではなく、状況の変化に応じて見直すことが重要です。
• 相続人の死亡、財産の増減、法律改正などにより、遺言内容が不適切になることがあります。
• 弁護士や司法書士、公証人などの専門家に相談することで、形式不備や内容の不備を防げます。
• 遺言書の作成時に、相続税や不動産登記などの実務面も考慮すると、よりスムースな相続が可能になります。


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