▼被疑者の簡易鑑定とは

query_builder 2025/10/10
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被疑者の簡易鑑定とは、刑事事件において起訴される前に、検察官の判断に基づき、被疑者の精神状態を医師に診察してもらい、その責任能力について意見を聞くための手続です。

これは、検察官が被疑者を起訴するかどうか(終局処分)を決定するための参考資料を得ることを目的としています。


実施の判断と目的

簡易鑑定を行うかどうかは、検察官が事件記録や被疑者の供述・態度などから、責任能力に疑問があると判断した場合に決定されます。

例えば、犯行動機や犯行形態が不合理である、あるいは逮捕後の言動が理解しがたい、といった状況がこれに該当します。

簡易鑑定の大きな目的は、迅速かつ簡便に被疑者の精神医学的な見地からのスクリーニング(ふるい分け)を行うことです。

医師の意見を踏まえ、検察官は被疑者が心神喪失(責任能力なし)や心神耗弱(責任能力限定的)に該当する可能性があるかを判断します。

もし責任能力に問題があると判断されれば、不起訴処分とする可能性が高まります。

逆に、問題がないと判断されれば、起訴する可能性が高くなります。


簡易鑑定の実施方法

簡易鑑定は、鑑定留置(被疑者を拘置所や病院に留置して集中的に診察すること)を伴わずに実施されます。

通常、被疑者が勾留されている最中に、医師が1回限り、30分から1時間程度(場合によっては2〜4時間程度)の問診を行います。

簡易鑑定の実施には、被疑者本人の同意が必要とされることがあります。

この短い診察時間の中で、医師は事件の概要や、被疑者の精神科治療歴、家族歴などを参考にして、現在の精神状態と犯行時の責任能力についてごく簡易な診断を行い、その意見を検察官に伝えます。

日本の刑事司法における精神鑑定件数の大多数(9割以上)をこの簡易鑑定が占めているのが現状です。


簡易鑑定と起訴前本鑑定(正式鑑定)との違い

簡易鑑定は、同じく起訴前に行われる起訴前本鑑定(正式鑑定)とは、その方法と期間において大きく異なります。

本鑑定の実施方法

本鑑定は、鑑定留置が伴う正式な手続です。

鑑定留置では、被疑者の勾留はいったん停止され、被疑者は拘置所や精神病院などに移送されます。

留置期間は2〜3か月程度に及ぶことが多く、医師は継続的な診察、心理テスト、脳検査など、時間をかけた精密な検査を行います。

両者の決定的な違い

簡易鑑定が「1回限り」「短時間」の問診で、あくまで検察官の参考情報を得るためのスクリーニング(ふるい分け)であるのに対し、本鑑定は「2〜3か月間」「集中的な精密検査」を通じて、責任能力の有無や程度を科学的に立証することを目的としています。

簡易鑑定で責任能力の判断が難しいとされた場合に、本鑑定に移行することもありますが、本鑑定の実施は簡易鑑定に比べて非常に稀です。

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