▼賃借権と使用借権の違い

query_builder 2025/10/09
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賃借権と使用借権の違いについて、詳細に解説します。


賃借権と使用借権の決定的な違い

賃借権と使用借権は、どちらも他人の物を借りて使用・収益できる権利ですが、その法的性質は根本的に異なります。

この違いを生む最大の要因は、対価(賃料)の有無です。


1. 対価(賃料)の有無

賃借権:物を借りる対価として、賃料(地代や家賃)の支払いが発生する有償契約(賃貸借契約)に基づいて発生する権利です。

使用借権:物を借りる対価として、賃料の支払いが原則として発生しない無償契約(使用貸借契約)に基づいて発生する権利です。

友人から傘を借りるような、個人的な信頼関係に基づく性質が強い契約です。


2. 法的保護の強さと適用法規

対価の有無によって、法律が借主を保護する度合いが大きく変わります。

賃借権:借主が対価を支払っているため、その権利は手厚く保護されます。

特に土地や建物の賃貸借については、民法の規定に加え、借主の保護を目的とした借地借家法が適用されます。

これにより、正当な理由がなければ貸主は契約を解除したり、更新を拒否したりすることができません。

使用借権:無償であるため、賃借権に比べて借主の権利は非常に弱いです。

借地借家法のような特別な保護法規の適用はなく、民法の規定のみが適用されます。


3. 対抗力(第三者への主張)の有無

対抗力とは、契約を結んだ相手方だけでなく、その後に目的物の所有者となった第三者に対しても、自分の権利を主張できる効力です。

賃借権:土地や建物の賃貸借では、登記や借地上に建物を所有して登記をすることで、対抗要件を備えることができます。

これにより、貸主が目的物を第三者に売却した場合でも、賃借人は新しい所有者に対して引き続きその物を借りる権利を主張し、住み続けることが可能です。

使用借権:原則として対抗力がありません。

貸主が目的物を第三者に譲渡した場合、借主は新しい所有者に対して「タダで借りている権利」を主張できず、退去を求められる可能性が高くなります。


4. 契約の存続性(借主の死亡時)

賃借権:賃借権は財産権とみなされ、借主が死亡しても契約は終了せず、その権利・義務は相続人に承継されます。

使用借権:契約の基盤が当事者間の個人的な信頼関係にあるとされるため、借主が死亡すると原則として契約は終了します。

相続人が使用借権を引き継ぐことはできません。


5. 契約の解除と費用負担

 賃借権の場合、貸主からの解除借地借家法や民法により、借主の債務不履行や正当事由がない限り、一方的な解除は困難です。

使用借権の場合、原則として、貸主はいつでも契約を解除し、物の返還を求めることができます(ただし、使用の目的を定めた場合は、その目的を達成するまでの間は解除できない場合があります)。

必要費の負担について、賃借権の場合、物の維持・管理に必要な費用(必要費)は、原則として貸主(賃貸人)が負担します。

使用借権の場合、物の保管や保存に必要な通常の費用は、借主が自ら負担しなければなりません。

このように、賃借権は「対価を支払う代わりに法的に手厚い保護を得る権利」であり、使用借権は「無償で借りる代わりに権利の保護が限定的で、貸主の意思によって終了しやすい権利」であると言えます。

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