▼遺留分侵害額請求とは何か

query_builder 2025/09/18
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遺留分侵害額請求とは、相続人のうち一定の者が、被相続人の遺言や生前贈与によって本来保障される最低限の相続分(これを「遺留分」といいます)を侵害された場合に、その侵害された分を金銭で請求できる権利です。

これは、令和元年の民法改正によって導入された制度で、従来の「遺留分減殺請求権」に代わるものです。
従来の制度では、遺留分を侵害された相続人が、具体的な財産(不動産や株式など)を返還するよう請求することができましたが、これにより権利関係が複雑化し、紛争が長期化する傾向がありました。

改正後は、金銭による精算方式に一本化され、より簡潔で実務的な運用が可能となっています。


●遺留分を請求できる人
遺留分を請求できるのは、法定相続人のうち、兄弟姉妹を除いた者です。

具体的には、配偶者、子(代襲相続人を含む)、そして子がいない場合には直系尊属(たとえば父母)が該当します。

兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、請求権はありません。


●遺留分の割合と計算方法
遺留分の割合は、相続人の構成によって異なります。

たとえば、配偶者のみが相続人である場合は、遺産の半分が遺留分となります。

子のみの場合も同様に半分です。

直系尊属のみが相続人の場合は、遺留分は遺産の3分の1にとどまります。
遺留分の具体的な金額は、まず「遺留分算定の基礎となる財産の価額」を算出し、そこから遺留分権利者の法定相続分に応じた割合を掛けて求めます。

そのうえで、すでに取得している相続分や特別受益(生前贈与など)を差し引いた残額が、遺留分侵害額として請求可能な金額となります。


●請求の方法と手続
遺留分侵害額請求は、まず相手方に対して意思表示をすることから始まります。

これは内容証明郵便などで行うのが一般的です。

意思表示がなされた後、話合いで解決できない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。

調停が不成立となった場合には、訴訟によって請求することも可能です。
この請求は、相続開始および遺留分の侵害を知った時から1年以内に行わなければならず、これを過ぎると時効により権利が消滅します。

また、相続開始から10年が経過すると、たとえ侵害を知らなかった場合でも請求権は除斥期間により消滅します。


●実務上の留意点
実務においては、遺留分の算定にあたり、被相続人の生前贈与がどの程度含まれるかが重要な争点となります。

相続人に対する贈与は、原則として相続開始前10年以内のものが対象となりますが、第三者に対する贈与は1年以内のものに限られます。

また、遺産の評価には不動産や非上場株式など、専門的な知識が必要となる場合があり、税務上の影響も考慮しなければなりません。
さらに、請求の相手方が複数いる場合や、遺言の内容が複雑な場合には、調停や訴訟が長期化する可能性もあるため、早期の専門家への相談が推奨されます。

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