▼財産分与における「特有財産性」の考慮

query_builder 2025/09/17
ChatGPT Image 手塚治虫風

財産分与における「特有財産性」の考慮は、離婚時の財産整理において極めて重要な判断要素です。

特有財産とは、婚姻前から一方が有していた財産や、婚姻中に一方が単独で取得した財産のうち、性質上共有と認められないものを指します。

民法第762条第1項により、夫婦の一方が婚姻前から有していた財産や、婚姻中に自己の名義で取得した財産であっても、原則として共有財産とはされず、財産分与の対象外となります。
たとえば、婚姻前に蓄えていた預貯金や、親からの贈与、相続によって取得した不動産などは、特有財産として扱われる可能性が高いです。

これらは、婚姻関係の中で形成されたものではなく、個人の固有の権利に基づいて取得された財産であるため、離婚時に相手方と分け合う必要はないとされます。
ただし、実務上は特有財産と共有財産が混在するケースが多く、単純な区分では済まないことがあります。

たとえば、婚前の預貯金口座に婚姻後の給与が振り込まれていた場合、その口座の残高全体が特有財産と認定されるわけではなく、婚姻時点の残高を特有財産とし、それ以降の増加分は共有財産とみなされることがあります。

つまり、婚姻後の収入が加わった部分については、夫婦の協力によって形成された財産と評価されるため、分与対象となるのです。
また、住宅購入に際して婚前の財産を頭金として支出した場合、その頭金部分は特有財産と認定される可能性がありますが、住宅全体が共有財産として扱われる場合には、評価額から頭金相当額を控除した残額が分与対象となることもあります。

このように、特有財産が共有財産の形成に寄与している場合には、その寄与分を考慮して調整されることがあります。
さらに、退職金や年金など将来受け取る財産についても、婚姻期間に対応する部分のみが共有財産とされる傾向があります。

たとえば、就労期間が30年で婚姻期間が15年であれば、退職金の半分が共有財産とみなされ、分与対象となる可能性があります。
特有財産性を主張する場合には、立証責任がその主張者にあります。

つまり、婚前から保有していたことや、贈与・相続によって取得したことを証明する必要があります。

これには、通帳の履歴、贈与契約書、遺産分割協議書、送金記録などの客観的資料が求められます。

証明が不十分な場合には、裁判所はその財産を共有財産と推定することがあり、分与対象となってしまう可能性があります。
実務では、財産分与の公平性を確保するために、特有財産性の判断は慎重に行われます。

特有財産が明確に区別されていない場合や、共有財産との混在がある場合には、裁判所は実質的な形成過程や夫婦の協力関係を重視して判断します。

そのため、財産の管理や記録を明確にしておくことが、離婚時の不利益を避けるために重要です。
このように、特有財産性の考慮は、単なる形式的な区分ではなく、実質的な形成過程や夫婦の協力関係、そして立証の有無によって左右される複雑な判断領域です。

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