▼日本における離婚後の親権制度

query_builder 2025/09/11
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日本における離婚後の親権制度は、長らく「単独親権」が原則でした。

つまり、離婚をすると父母のどちらか一方のみが親権者となり、子どもの重要な決定(進学、医療、転居など)を行う権限を持つという制度です。

この制度は、戦後の民法改正以来約77年間維持されてきました。
しかし、近年では国際的な人権基準や、離婚後も両親が子どもに関与することの重要性が認識されるようになり、日本でも共同親権の導入が議論されてきました。

特に、ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)との整合性や、欧米諸国との制度的なギャップが問題視されていました。
こうした背景のもと、2024年5月に民法改正案が成立し、離婚後も父母が共同で親権を持つことが可能となる制度が導入されることになりました。

施行は2026年5月までに予定されています。
改正後の制度では、離婚時に父母が合意すれば共同親権を選択することができます。

合意が得られない場合には、家庭裁判所が子の利益を最優先に考慮して、共同親権か単独親権かを判断することになります。

共同親権が認められた場合でも、すべての意思決定を両親が共同で行うわけではありません。

日常的な育児や生活に関する事項は、実際に子どもと暮らしている親が単独で判断できるよう配慮されています。

一方で、進学や医療、転居などの重要事項については、原則として両親の協議が必要になります。
ただし、DV(家庭内暴力)や虐待がある場合には、共同親権の選択は認められません。

これは、被害者が加害者と継続的に関わることを強いられるリスクを避けるためです。

家庭裁判所は、こうした事案においては単独親権を選択するよう求められます。
また、すでに離婚して単独親権となっている場合でも、改正法施行後には親権者の変更を家庭裁判所に申し立てることが可能になります。

ただし、これも子の福祉を最優先に判断されるため、必ずしも共同親権が認められるわけではありません。
この制度改正は、親子関係の在り方や家族法の根幹に関わる大きな転換点です。

共同親権の導入によって、離婚後も両親が子どもの成長に関与できる可能性が広がる一方で、意思決定の複雑化や紛争の長期化といった課題も懸念されています。

制度の運用にあたっては、家庭裁判所の判断基準や、親同士の協議支援の仕組みが重要な役割を果たすことになるでしょう。

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