▼拘禁刑の新設について

query_builder 2025/08/21
0408-23

拘禁刑とは、2025年6月に施行された刑法改正によって新たに導入された刑罰で、従来の懲役刑と禁錮刑を一本化したものです。

この改正の背景には、両者の実態がほとんど変わらなくなっていたことがあります。

たとえば、禁錮刑の受刑者も希望すれば刑務作業に従事できるようになっていたため、懲役との違いが曖昧になっていました。
拘禁刑では、受刑者を刑事施設に拘置し、必要に応じて作業や指導、教育などを行います。

つまり、刑務作業は必須ではなく、受刑者の特性や更生の可能性に応じて柔軟に処遇が決定される仕組みです。

これにより、若年者や障害を持つ人、依存症のある人など、それぞれに適した支援やプログラムを提供しやすくなりました。
この制度の導入によって、刑罰の目的が単なる懲罰から、再犯防止や社会復帰支援へと大きくシフトしています。

受刑者一人ひとりに対して個別の処遇計画が立てられ、教育や職業訓練、福祉的支援などが組み込まれるようになりました。

これにより、刑務所が「矯正の場」としての役割をより強く担うことになります。
ただし、制度の運用には課題もあります。

たとえば、専門的な支援を行うための人材の確保や、刑事施設の設備の充実、地域社会との連携などが求められています。国民の理解と協力も不可欠です。
拘禁刑の新設は、明治時代から続いてきた刑罰体系の大きな転換点であり、日本の刑事政策が新たな段階に入ったことを示しています。


📜 拘禁刑に関する具体的な条文(刑法)
改正後の刑法第12条には、以下のように規定されています。
この条文により、従来の懲役刑のように「作業が義務」とはされず、受刑者の特性に応じて柔軟に作業や指導を行えるようになっています。

なお、旧第13条(禁錮刑)は削除されました。


🏢 実際の運用例:矯正処遇課程の導入
拘禁刑の導入に伴い、刑務所では「矯正処遇課程」という新しい枠組みが設けられました。

これは受刑者の特性に応じて、教育・治療・就労支援などを組み合わせた処遇を行うものです。
たとえば:
• 依存症回復課程:薬物やアルコール依存のある受刑者に対し、認知行動療法やグループセッションを実施。
• 高齢福祉課程:70歳以上の高齢受刑者に対し、バリアフリー居室での生活支援やリハビリ作業を提供。
• 若年者課程:学力が不十分な若年層に対し、基礎教育や職業訓練を重点的に実施。
これらの課程は、心理専門官や福祉専門官など多職種の職員が関与し、受刑者の再犯リスクや処遇準備性を多軸で評価したうえで適用されます。


🧩 実務上のポイント
• 刑務所はすべての受刑者に対して処遇計画を作成。
• 作業は「義務」ではなく「必要性に応じた選択肢」。
• 仮釈放や恩赦の制度は従来通り維持。
• 施行日(2025年6月1日)以降に発生した犯罪にのみ適用。


このように、拘禁刑は単なる刑罰の一本化ではなく、受刑者の多様な背景に応じた「個別最適化された処遇」を可能にする制度です。


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