▼妻が「AVを全部捨てなきゃ離婚する」と宣告、ホントに離婚理由になってしまう?

query_builder 2025/03/19
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「嫁にAV全部捨てなきゃ離婚するって言われた」。このような投稿がインターネットの掲示板で話題になった。  

投稿者の男性はあるAV女優が大好きで、その女優の出演作を全てコンプリートしていたら、所有数が60本を超えてしまった。

それらを整然と自室の本棚に並べていたところ、「気持ち悪い」と妻の逆鱗に触れてしまった。  

この投稿に対して、「浮気や風俗ならともかくAVくらいならいいのでは」「女性がジャニーズを応援するのと同じだろ」という意見や「同じ女優60本は嫁からしたら浮気みたいなもんだろうな」「棚に並べるのはありえない」などのコメントが寄せられた。  

結局、投稿者は人生初の土下座をして所有を許してもらい、妻からは「じゃあ許す代わりに風俗とかは絶対行かないでよ、行ったら離婚だから」と言われたそうだ。  

もし、怒りが解けなかった場合、AVを大量に持っていたことが離婚理由になってしまうのだろうか。

また、AVを持っていたということは、風俗にいくことや、浮気することとは違いがあるのだろうか。

弁護士濵門俊也がお答えします。  


●コメント

結論からいえば,AVを大量に所持していただけでは離婚原因とはならないでしょう。

民法第770条第1項には,離婚原因が列挙されているところ,同条同項第1号にいう「不貞行為」とは,配偶者のある者が自己の自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます(最判昭和48年11月15日民集27巻10号1323頁)。

本件のようにAVを大量に所持していたとしても「不貞行為」に該当しないことは明白です。

もちろん,相手方配偶者が性的関係を結んだことが違法性を認めるための絶対的要件とはいえないので,性行為・肉体関係を伴わない行為であっても,婚姻共同生活を破壊に導く可能性のある行為は離婚原因になり得ます。

しかし,本件においては,AVを大量に所持していただけであり,性行為類似の行為もないといえますので,やはり離婚原因とはならないように思います。

そうしますと,本件のようにAVを大量に所持していることが,民法第770条第1項第5号にいう「婚姻を継続し難い重大な事由」があるといえるかが問題となります。

ここにいう「婚姻を継続し難い重大な事由」とは,婚姻関係が破綻し,共同生活の回復の見込みがない場合を指し,一切の事情が総合的に考慮されると考えられています。

裁判例において,婚姻を継続し難い重大な事由として認定されたもののなかには,「相手方配偶者の性的異常」「夫婦間の性格の不一致」等がありますが,まず,AVを大量に所持しているからといって性的異常者と認定されることはないと思います。

また,風俗に行ったり,浮気をすることは,いずれも「不貞行為」に該当し得ることはもちろん,一般的な夫婦の倫理観からすれば,道義的にも法的にも悪い行為であると考える方も多くおられるはずです。

したがって,「夫婦間の性格の不一致」といえる事案はあると思います。

これに対し,AVを大量に所持していることは,少なくとも上記のように「不貞行為」には該当しませんし,奥さまとしては,あまりいい気はしないかもしれませんが,せいぜい嫌悪感を抱く程度でしょうから,「夫婦間の性格の不一致」があるとまではいいづらいでしょう。

結局離婚原因とはならないこととなります。


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